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  • 執筆者の写真mizuki shikimachi

【祖父と僕】⑤メイオウ




それから、やれることはなんでもやり、これ以上ないバキバキの体を手にしました。


演奏については、メンバーからも、

「水晶くん、ヴァイオリンの技術進化してない!?」

と言ってもらえるほど。


そうして迎えたコンサート当日、祖父は会場に来てくれました。


アンコールをいただいた後、ぼくは観客の皆さんに次のお願いをしました。


「ぼくはこれまでヴァイオリニストとして活動している中で、どんな時でも、お客様が年下であろうと、子どもであろうと、丁寧語を崩したことがありません。だけど、自分の本心で話したいので、今だけ普段の話し方に戻して良いですか?」


観客の皆様は、あたたかく了承してくださいました。


「今まで、俺がここまでヴァイオリニストになれたのはじいちゃんのおかげだよ。じいちゃんは1番なんてもんじゃない。ランキング1位を超えた”チャンピオン”だよ。本当に大好きだよ、ありがとう!!」


そして、楽曲の『メイオウ』を演奏。


この曲は、惑星から外された冥王星とはみ出し者の自分を重ねて作った曲です。中学2年生まで脳性まひの障がいで車椅子生活をしていたのですが、トレーニングで筋肉をつけたことで長時間立ってヴァイオリンを弾けるようになりました。


「自分の人生も、人々の人生も鼓舞し、励ましたい」という人の心に寄り添う想いを込めて作曲しました。


また、ぼくのオリジナル楽曲の中でも、最も体力と技術を必要とするもの。。。この時、体はもう限界でした。


「頼む、最後まで動いてくれ!俺の体!」


メイオウ(冥王)は、「冥府(あの世、死者の世界)の王」という意味があります。


「じいちゃんが亡くなるなんて信じられないけど、あの世であろうとまた会いたい!」

と思いながら、この曲を弾ききることができました。


コンサートが終わった後、祖父の元へ・・・。


すると、周りのお客様が、

「この人がみっくんが大好きなおじいちゃんなんですね!」

「今までにないくらい、感動しました!」

と言って、祖父のことも賞賛してくださいました。


祖父は驚きながらも、すごく喜んでくれて、

「ありがとなー、水晶、ありがとなー」

と言ってくれました。


ぼくのヴァイオリニストとしてのベストのステージを届けることができて、とても嬉しかったです。ただ、これで祖父の膵臓がんが消えるわけではありません。


最後の願いを込めて、祖父に「ある説得」をすることにしたのです。


式町水晶

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Profile

式町水晶(しきまちみずき)

1996年北海道旭川生まれ。
脳性まひと闘うプロヴァイオリニスト。

 

東日本大震災の津波に耐えた陸前高田奇跡の一本松と被災地に残された瓦礫や家具を再利用して作られた 「津波ヴァイオリン」を所持し演奏することを託される。

障がい者と健常者の垣根を越え、 より多くの人々に夢や希望を贈りたいとの思いで、東日本大震災チャリティーコンサートや、全国各地での災害支援活動、社会貢献活動を中心に、コンサート、 ライブ、 各種講演会、 楽曲制作も精力的に行っている。

式町水晶
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